本堂には、観音さまを中心に、
水天さまと弁天さまが
祀られています。
この三尊は、
命を支える「水」と、
人々の願いに寄り添う「祈り」に
深く結びついた神仏です。
作法が分からなくても、
手を合わせていただければ
それだけで十分です。

※当山に安置されている三尊は、愛媛県出身の仏師・長野祥玄師によって丹精込めて修復・造仏されたものです。氏の確かな技術と信仰心によって、現在のお姿で皆様をお迎えしております。

聖観世音菩薩

本尊

聖観世音菩薩
(しょうかんぜおんぼさつ)

慈悲と救済
~旧自玄坊(じげんぼう)本尊~

由緒と功徳

かつて自玄坊(じげんぼう)の本尊として祀られていた御仏です。観世音菩薩は『般若心経』に登場する観自在菩薩としても知られます。世の中の苦しみの声をあまねく観じ、人々の機根(性質や状況)に応じて姿を変え、救いの手を差し伸べる、慈悲の結晶ともいえる仏さまです。

施無畏印(せむいいん)

手のひらを正面に向けた右手は「恐れなくてよい」と説く印です。人々の抱える恐怖や不安を慈悲の心で包み込み、穏やかな安寧へと導いてくださる救済の意志を示しています。

蓮華(れんげ)

左手に持たれているのは、蓮(はす)の蕾(つぼみ)です。
泥の中にありながら、決して汚れに染まらず清らかに咲く蓮は「悟りの心」を象徴しています。蕾の姿は、まだ悟りに至らず迷いの中にいる衆生(しゅじょう)を表したものです。
観音さまがその蕾を大切に手に取られているのは、「大丈夫、必ず花開く時が来る」という、温かな慈悲が込められているからです。

瑞雲(ずいうん)の光背

美しい透かし彫りの瑞雲(祥雲)は、私たちを救いに来てくださるときに乗る、聖なる雲を表しています。緑と金の鮮やかな彩色は、観音さまから放たれる智慧の光と、尽きることのない救済の御力を象徴しています。

極致の技「截金(きりかね)」

本像の蓮華座の計五十枚の花びらには、一枚ごとに十八本、総計九百本もの截金が極細の純金箔によって施されています。葉脈の一本一本に職人の祈りが込められており、光の加減で神々しく浮かび上がるその輝きは、まさに「極致の技」と呼ぶにふさわしい荘厳さを放っています。

四面開きの厨子(ずし)

落ち着いた黒塗りに映える金色の内壁が、重厚感と威厳を併せ持った厨子を構成しています。四方の扉を開放することで、観音さまの慈悲深いお姿をはっきりと見ることができます。

水天

脇侍

水天
(すいてん)

調和と浄化
~万物の生命を支える水の主宰神~

由緒と功徳

水天は古代インドの最高神を起源とする護法神であり、世界を守護する「十二天」の一尊として、西方を護る水の神さまです。かつては水だけでなく、天空や司法の神としても信仰されていました。雨や水の恵みをもたらすことから、「風雨順時」や「五穀豊穣」の祈りが捧げられ、清らかな水によって心を浄化し、災いを祓う神さまとしても信仰されています。

霊獣「霊亀(れいき)」

万物の源たる水の精が形を成した霊亀は、清らかな水域を統べる神の乗り物(神座)です。永遠の命と深い知恵で世界を見守り、荒波を鎮めて平和をもたらす守護神としての姿を象徴しています。

蛇(水の神である龍神の象徴)

頭上の五匹の蛇は『水のあらゆる力を有する神』であることを示し、左手の蛇の縄「龍索」(りゅうさく)で『人々の悩みや悪い心を縛り取り、一人残らず救い上げる』という慈悲の心を表現しています。

三鈷剣(さんこけん)

右手に握る三鈷剣は、あらゆる邪気や魔を打ち払い、人々の迷いを断ち切る智慧の象徴です。左手の龍索が「救い」を表すのに対し、右手の剣は「守護」の強い力を示しています。

日輪(太陽)

光背に描かれた日輪は、水天がかつて天空を統べる至高神として、広大な支配力を持っていた歴史を物語っています。水の神でありながら太陽の輝きを背負う姿は、宇宙の秩序を司る神としての威厳を表しています。

意匠

本像には、伝統的な「繧繝彩色(うんげんさいしき)」をはじめ、「截金(きりかね)」や精緻な「錺金具(かざりかなぐ)」といった技法が施されています。これらの技法が織りなす色彩と輝きは、水天の清らかな霊力と、神聖な空間の荘厳さを華やかに表現しています。また霊亀の足元にみられる鱗の表現は、職人の緻密な手仕事と高度な彩色技術の結晶と言えます。

弁天

弁天
(弁才天/弁財天)

智慧と福徳
~久松家より拝領~

由緒と功徳

弁天は古代インドの水の女神を起源とする護法神です。弁才天と弁財天の表記があり、弁才天は水の流れのように絶え間なく流れる弁舌(智慧)や音楽を司ることから、「学問」や「芸能」の神さまとして知られています。後世には弁財天として、人々に「富」と「福徳」を授ける神さまとしても厚く信仰されています。

宇賀弁才天/宇賀弁財天
(うがべんざいてん)

日本に伝わった弁天は、もともと八本の腕に武器を持つ軍神としての性格が強い姿でした。その後、頭上に翁(おきな)の顔と蛇の体を持つ「宇賀神(うがじん)」をいただく「宇賀弁才天/宇賀弁財天」の姿へと発展し、日本独自の信仰が育まれていきました。

八本の手と持物(じもつ)

八本の腕は、あらゆる方向から差し伸べられる救いの手を象徴しています。持物は多岐にわたる御利益を表し、人々の多様な願いをひとつひとつ漏らさず聞き届けようとする、広大無辺な慈悲の心が込められています。

宝棒(ほうぼう)
三又戟(みつまたげき)

武神としての性格を象徴する「宝棒」や「三又戟」は、人々の煩悩や諸々の障害、あるいは国家の厄災を強力に打ち払う役割を担っています。

鉤(かぎ)
法輪(ほうりん)

幸福の蔵を開く「鉤」は、実りと豊かさを呼び込み、仏の教えを車輪が転がるように広める意味の「法輪」は、仏の教えによって人々の心を救う御力を示しています。

三鈷剣(さんこけん)
如意宝珠(にょいほうじゅ)

無明(むみょう)の迷いを断ち切る「三鈷剣」は本質を見抜く智慧を表し、願うままに宝を放出する「如意宝珠」は尽きることのない福徳をもたらす象徴です。

弓・矢

邪気を払い、願望を射抜く「弓矢」は、物事を成就へと導く不退転の力を表しています。

意匠

水の女神にちなみ、台座には水面に浮かぶ蓮の葉と水の流れが表現されています。本像の表情には福徳を象徴する穏やかな微笑みをたたえ、彩色の技法には明るく柔らかな中間色を基調とした、日本伝統の「繧繝彩色(うんげんさいしき)」を採用しています。